「学校教育等に関する移動の安全確保のための対策」のとりまとめについての通知
1.令和8年6月30日発出通知
令和8年5月、部活動の遠征のための移動中に生徒に死傷者が出る重大な事故が発生しました。これを受けて令和8年6月30日に国土交通省と文部科学省がとりまとめた「学校教育等に関する移動の安全確保のための対策」のとりまとめについての通知(以下、「本通知」といいます。)が発出されました。
この問題は交通事故とスポーツ法務が交錯する問題でもあり、個人的に注目していた問題でもあります。
そのため、今回発出された「学校教育等に関する移動の安全確保のための対策」を確認したところ、その記載内容は多岐にわたりますが、その中でも特に個人的に注目をした3つの点について簡単にまとめました。
2.本通知の適用範囲
本通知発出のきっかけとなった事故が学校の部活動の遠征時の事故であったことから学校現場の問題として捉えられている向きがあるように思います。
しかし、今回発出された「学校教育等に関する移動の安全確保のための対策」を見ると、以下の記載が存在することから、学校現場のみならず少なくとも部活動の地域展開後の地域クラブ活動にも適用がされます。
| なお、現在、公立の中学校等を主な対象として、部活動の地域展開等が推進されており、展開後の地域クラブ活動についても、子供たちの安全確保は重要である。このため、本対策については、5月19日通知と同様に、適用が可能な部分については、「学校」を「地域クラブ活動の運営団体・実施主体」、「学校の管理職」を「地域クラブ活動の運営団体・実施主体の責任者」、「部活動」を「地域クラブ活動」、「教職員」を「地域クラブ活動のスタッフ・指導者等」と読み替えて、部活動の地域展開による地域クラブ活動にも適用する。 |
そのため、少なくとも部活動の地域展開後の地域クラブ活動の運営団体においても、今回発出された「学校教育等に関する移動の安全確保のための対策」の内容はしっかりと確認をしておく必要があります。
3.学校側における契約書等のチェック
「学校教育等に関する移動の安全確保のための対策」には、「学校及び交通事業者等(貸切バス事業者、タクシー事業者、公共ライドシェア事業者、レンタカー事業者及び旅行業者。以下同じ。)は、安全確保のための措置について、契約内容等の書面での確認を含め、担当者任せにせず、組織として対応に当たること。」と明記されています。
これは、安全確保のための措置について、現場の担当者のみならず学校の管理職もしっかり確認することで事故防止に繋げる点が主要な目的と考えられます。しかし、そもそも顧問等現場の担当者に契約や支払いを完全に一任してしまうと架空の領収証を作成されるなどして学校のお金を着服するなどの横領の危険もあります。そのため、学校のお金を使用する取引においては横領防止の観点からも学校の管理職において契約書等の確認はしっかり行う必要があり、この点は学校のみならず地域クラブにおいても同様と考えられます。
4.遠征の詳細についての事前承認及び保護者への連絡
「学校教育等に関する移動の安全確保のための対策」によると、学校外で行う部活動を含む学校管理下の校外活動のための児童生徒の引率計画の書面等には、引率を行う日程・行程、引率する児童生徒(人数・氏名)、引率者、移動手段、児童生徒が乗車する車両への同乗者、緊急時の対応方針・体制・連絡先等を記載すると共に児童生徒の校外活動の計画について、書面等により、保護者に対して事前に連絡することが求められています。この引率計画の作成及び保護者への事前連絡は事故防止のために必要なものであるものの、それなりに教職員の負担も大きいものと考えられます。
そのため、ますます部活動の顧問の負担が増大することからすると、この点は現場の教職員の負担軽減という観点から部活動の地域展開等を加速させる要因となるかもしれないと考えております。